妊娠・育児休業中の制度 / 社会保険労務士事務所 関西労務管理研究所(大阪|茨木市)



女性労働者から妊娠の報告を受けたら

働く女性が利用できる制度の周知


日頃から、従業員が利用できる制度などについて、社内イントラネットに掲示したり、説明資料を渡すなどして周知しておきます。 また、妊娠が分かったら、早めに申し出をしてもらうよう指導しましょう。

 妊娠した女性への説明参考資料(PDF)



保健指導又は健康診査を受けるための時間の確保


事業主は、女性労働者が妊産婦のための保健指導又は健康診査を受診するために必要な時間を確保することができるようにしなければなりません。

(男女雇用機会均等法第12条)


女性は、妊娠すると、母体や胎児の健康のため、妊産婦のための保健指導又は健康診査を受ける必要がありますが、女性労働者の場合には受診の時間を確保することが困難な場合があることから、必要な時間の確保を事業主に義務づけることとしたものです。

※ここでいう妊産婦とは、妊娠中及び産後1年を経過しない女性をいいます。


★対象となる健康診査等
この法律でいう保健指導又は健康診査とは、妊産婦本人を対象に行われる産科に関する診察や諸検査と、その結果に基づいて行われる個人を対象とした保健指導のことです。(以下「健康診査等」といいます。)

★確保すべき必要な時間
事業主は、女性労働者からの申出があった場合に、勤務時間の中で、健康診査等を受けるために必要な時間を与えなければなりません。


【POINT!】

健康診査等に必要な時間については、以下をあわせた時間を考慮にいれて、十分な時間を確保できるようにしてください。

  • 健康診査の受診時間
  • 保健指導を直接受けている時間
  • 医療機関等での待ち時間
  • 医療機関等への往復時間

※なお、女性労働者が自ら希望して、会社の休日等に健康診査等を受けることを妨げるものではありません。



妊娠中の女性労働者への対応

妊娠中は、体質・体調の著しい変化によって、身体にも大きな影響を与えます。女性労働者が身体への負担を与えることのないよう配慮し、十分に能力を発揮することができる環境を整えてあげましょう。


妊娠中及び出産後の女性労働者が、健康診査等を受け、医師等から指導を受けた場合は、その女性労働者が、その指導を守ることができるようにするために、事業主は、勤務時間の変更や勤務の軽減等の措置を講じなければなりません。

(男女雇用機会均等法第13条関係)


指導事項を守ることができるようにするための措置
事業主が講じなければならない措置は、次のとおりです。

  • 妊娠中の通勤緩和
  • 妊娠中の休憩に関する措置
  • 妊娠中又は出産後の症状等に対応する措置

【POINT!】

事業主において、これらの措置を決定した場合には、決定後速やかに女性労働者に対してその内容を明示してください。その際は、書面による明示が望ましいでしょう。


産前・産後の休業について

無事に出産を迎え、体力回復の後、職場復帰を果たせるように、
出産が迫った時期と産後しばらくの期間は、休業を与えてあげましょう。


産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)(いずれも女性が請求した場合に限る)、産後は8週間女性を就業させることはできません。

(労働基準法第65条第1項、第2項)


産前については、当該女性労働者が請求した場合に、就業させてはならない期間です。 産後については、6週間は強制的な休業ですが、6週間を経過した後は労働者本人が請求し、医師が支障ないと認めた業務に就かせることは差し支えありません。
なお、産後休業の「出産」とは、妊娠4ヵ月以上の分娩をいい、「生産」だけでなく、「死産」や「流産」も含まれています。出産日は産前休業に含まれます。


【POINT!】

休業制度についての詳細は、妊娠の申し出時に事前に資料の配付を行うなど、制度に対する周知を行うことが大切です。 また、休業を取得するにあたり、関係者との引継等をスムーズに行うための面談等を実施することも効果的といえます。


育児中の女性労働者への配慮

女性労働者が仕事と育児の両立を図れるよう、会社も一緒にサポートする環境をつくりましょう。

 

生後満1年に達しない生児を育てる女性は、1日2回各々少なくとも30分の育児時間を請求することができます。

(労働基準法第67条)

 

生児には実子のほか養子を含み、育児時間をいつ与えるかは当事者間にまかされています。

 

【POINT!】

変形労働時間制の下で労働し、1日の所定労働時間が8時間を超える場合には、具体的状況に応じて法定以上の育児時間を与えることが望ましいとされています。

 

労働者は、申し出ることにより、子が1歳に達するまでの間、育児休業をすることができます(一定の範囲の期間雇用者も対象となります)。
一定の場合、子が1歳6ヶ月に達するまでの間、育児休業をすることができます。

(育児・介護休業法第5条~第9条)

 

育児休業ができる労働者は、原則として1歳に満たない子を養育する男女労働者です。日々雇用される者は対象になりません。休業の取得によって雇用の継続が見込まれる一定の範囲の期間雇用者は、育児休業がとれます。

 

★「一定の範囲の期間雇用者」とは

 一定の範囲の期間雇用者とは、申出時点において、次の1、2のいずれにも該当する労働者です。
  1.同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であること
  2.子が1歳に達する日(誕生日の前日)を超えて引き続き雇用されることが見込まれること

(子が1歳に達する日から1年を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかである者を除く)

 

労働契約の形式上期間を定めて雇用されている者であっても、その契約が実質的に期間の定めのない契約と異ならない状態となっている場合には、上記の一定の範囲に該当するか否かにかかわらず、育児休業の対象となります。
休業期間は、原則として1人の子につき1回であり、子が出生した日から子が1歳に達する日(誕生日の前日)までの間で労働者が申し出た期間です。

 

【POINT!】

一定の場合には、子が1歳6ヶ月に達するまで育児休業ができます。

1歳6ヶ月まで育児休業ができるのは、次の1、2のいずれかの事情がある場合です。

 

  1. 保育所に入所を希望しているが、入所できない場合
  2. 子の養育を行っている配偶者であって、1歳以降子を養育する予定であったものが、 死亡、負傷、疾病等の事情により子を養育することが困難になった場合 ※育児休業中の労働者が継続して休業するほか、子が1歳まで育児休業をしていた配偶者に替わって子の1歳の誕生日から休業することもできます。

育児休業申出
<申出の内容>
申出に係る子の氏名、生年月日、労働者との続柄、休業開始予定日及び休業終了予定日
<1歳までの育児休業の申出の期限>
休業開始予定日から希望通り休業するには、その1ヶ月前までに申し出ます。
<1歳から1歳6ヶ月までの育児休業の申出の期限>

休業開始予定日(1歳の誕生日)から希望通り休業するには、その2週間前までに申し出ます。

 

(1)パパ・ママ育休プラス(父母ともに育児休業を取得する場合の休業可能期間の延長

母(父)だけでなく父(母)も育児休業を取得する場合、休業可能期間が1歳2ヶ月に達するまで(2ヶ月分は父(母)のプラス分)育児休業を取得することができます。
※父の場合、育児休業期間の上限は1年間。母の場合、産後休業期間と育児休業期間を合わせて1年

 

(2)出産後8週間以内の父親の育児休業取得の促進

配偶者の出産後8週間以内の期間内に、父親が育児休業を取得した場合には、特別な事情がなくても、再度の取得が可能となります。

 

(3)労使協定による専業主婦(夫)除外規定の廃止

労使協定を定めることにより、配偶者が専業主婦(夫)や育児休業中である場合等の労働者からの育児休業申出を拒める制度を廃止し、専業主婦(夫)家庭の夫(妻)を含め、全ての労働者が育児休業を取得できるようになります。

<施行日>
上記(1)~(3)の施行日は、「改正法の公布日(平成21年7月1日)から1年以内の政令で定める日」です。

 

 

勤務時間の短縮等の措置
働きながら育児をすることを容易にするため、3歳未満の子を養育する労働者について、次のいずれかの措置を講じなければなりません。

(育児・介護休業法第23条)

 

1.短時間勤務制度

(1)1日の所定労働時間を短縮する制度

(2)週又は月の所定労働時間を短縮する制度

(3)週又は月の所定労働日数を短縮する制度
(隔日勤務、特定の曜日のみの勤務等の制度をいいます。)

(4)労働者が個々に勤務しない日又は時間を請求することを認める制度

2.フレックスタイム制

3.始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ

4.所定外労働をさせない制度

5.託児施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与

その他これに準ずる便宜の供与の例として、ベビーシッターの費用を事業主が負担する等が考えられます。
なお、1歳(1歳6ヶ月まで育児休業ができる場合にあっては、1歳6ヶ月)以上の子を養育する労働者については、これらの措置の代わりに育児休業の制度に準ずる措置を講ずることでも差し支えありません。
3歳から小学校に入学するまでの子を育てる労働者について上記の勤務時間の短縮等の措置を講ずることが、事業主の努力義務として求められています。

 

改正ポイント 育児・介護休業法のポイント2

子育て中の短時間勤務制度及び所定外労働(残業)の免除の義務化

(1)3歳までの子を養育する労働者が希望すれば利用できる短時間勤務制度(1日6時間)を設けることが事業主の義務となります。

(2)3歳までの子を養育する労働者は、請求すれば所定外労働(残業)が免除されます。

<施行日>
上記(1)、(2)の施行日は、「改正法の公布日(平成21年7月1日)から1年以内の政令で定める日」です。

 

子の看護休暇
小学生の就学前の子を養育する労働者は、会社に申し出ることにより、年次有給休暇とは別に1年に5日まで病気やけがをした子の看護のために休暇を取得することができます。

(育児・介護休業法第16条の2、第16条の3)

 

 

改正ポイント 育児・介護休業法のポイント3

  • 子の看護休暇制度の拡充
    休暇の取得可能日数が、小学校就学前の子が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日になります。
  • <施行日>
    上記(1)、(2)の施行日は、「改正法の公布日(平成21年7月1日)から1年以内の政令で定める日」です。

 

時間外労働・深夜業の制限
小学校就学前の子を養育する一定の労働者から請求があった場合には、1ヶ月24時間、1年150時間を越える時間外労働をさせてはならないことになっています。また、深夜(午後10時から午前5時まで)において労働させてはならないことになっています。

(育児・介護休業法第17条、第19条)

 

(1)苦情処理・紛争解決の援助及び調停の仕組みの創設

育児休業の取得等に伴う労使間の紛争等について、都道府県労働局長による紛争解決の援助及び調停委員による調停制度を設けます。

(2)勧告に従わない場合の公表制度及び報告を求めた場合に報告をせず、又は虚偽の報告をした者に対する過料の創設

法違反に対する勧告に従わない企業名の公表制度や、虚偽の報告等をした企業に対する過料の制度を設けます。

<施行日>
上記(1)、(2)のうち、調停については「平成22年4月1日」、その他については「平成21年9月30日」です。

 

 


改正育児・介護休業法、男女雇用機会均等法  平成29年1月1日施行

 育児のための制度の改正 (育児・介護休業法)

 

    

 今までは

 法改正後は

 育

  

 児

 

 休

 

 業

有期契約労働者の取得要件の緩和

○有期契約労働者の要件
(1)入社1年以上、(2)子が1歳以降も雇用継続の見込みがあること、(3)2歳までの間に更新されないことが明らかである者を除く
○有期契約労働者の要件
(1)入社1年以上、(2)子が1歳6か月になるまでの間に、更新されないことが明らかである者を除く (左記(2)、1歳までの雇用見込みの要件を削除)
対象となる子の範囲拡大 実子・養子
(法律上の親子関係であるもの)
下記要件を追加
特別養子縁組の監護期間中の子、養子縁組里親に委託されている子等、法律上の親子関係に準じる関係にあると言える子
子の看護休暇の半日単位の取得 対象となる子1人につき年5日、2人以上につき年10日(1日単位) 対象となる子1人につき年5日、2人以上につき年10日(半日単位の取得可)

 

 

 

※妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とするハラスメント防止措置について
<ポイント>

事業主は、以下の取組を行わなければなりません。(指針)
 1.ハラスメントがあってはならない旨の事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
 2.相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
 3.妊娠、出産等に関するハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応
 4.妊娠、出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置
 5.1から4までの措置と併せて講ずべき措置(プライバシー保護、不利益取扱いを行わない旨の定めを講じ、周知すること)

 

 


改正育児・介護休業法(平成29年10月1日施行)

改正内容1 保育所に入れない場合など、2歳まで育児休業が取得可能に  

 

☆ 子が1歳6か月に達する時点で、次のいずれにも該当する場合には、子が1歳6か月に達 する日の翌日から子が2歳に達する日までの期間について、事業主に申し出ることにより、 育児休業をすることができます。 

① 育児休業に係る子が1歳6か月に達する日において、労働者本人又は配偶者が育児休業 をしている場合

② 保育所に入所できない等、1歳6か月を超えても休業が特に必要と認められる場合 

 

☆ この2歳までの休業は、1歳6か月到達時点で更に休業が必要な場合に限って申出可能と なり、原則として子が1歳6ヶ月に達する日の翌日が育児休業開始予定日となります。なお、 1歳時点で延長することが可能な育児休業期間は子が1歳6か月に達する日までとなりま す。 

 

☆ 育児休業給付金の給付期間も延長した場合は、2歳までとなります。 

 

  

改正内容2 子どもが生まれる予定の方などに育児休業等の制度などをお知らせ 

 

☆ 事業主は、労働者もしくはその配偶者が妊娠・出産したことを知ったとき、又は労働者が 対象家族を介護していることを知ったときに、関連する制度について個別に制度を周知する ための措置を講ずるよう努力しなければなりません。 

 

☆ 個別に制度を周知するための措置は、労働者のプライバシーを保護する観点から、労働者 が自発的に知らせることを前提としたものである必要があります。そのためには、労働者が 自発的に知らせやすい職場環境が重要であり、相談窓口を設置する等の育児休業等に関する ハラスメントの防止措置を事業主が講じている必要があります。 

 

 

☆ 労働者に両立支援制度を周知する際には、労働者が計画的に育児休業を取得できるよう、 あわせて、次の制度を周知することが望ましいものです。

・ 育児・介護休業法第5条第2項の規定による育児休業の再取得の特例(パパ休暇)

・ パパ・ママ育休プラス

・ その他の両立支援制度  

 

改正内容3 育児目的休暇の導入促進 

 

☆ 事業主は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者について、育児に関する 目的で利用できる休暇制度を設けるよう努力しなければなりません。 

 

☆ 「育児に関する目的で利用できる休暇制度」とは、いわゆる配偶者出産休暇や、入園式、 卒園式などの行事参加も含めた育児にも利用できる多目的休暇などが考えられますが、い わゆる失効年次有給休暇の積立による休暇制度の一環として「育児に関する目的で利用で きる休暇」を措置することも含まれます。各企業の実情に応じた整備が望まれます。