生産性向上 遠のく 、裁量労働制拡大先送り

花粉飛び交う3月を迎えました。春は、気温も上がり気持ちのいい季節なのですが、花粉で非常に苦しむ季節と感じる方のほうが今は多いの

ではないでしょうか。早く特効薬でも出ないかなと思います。

国会では、相変わらず進歩しない論議を繰り広げていますが、安倍総理が裁量労働制を働き方改革関連法案から切り離して法案提出していく

ようですね。生産性向上を目的とした法案でもあり再三先送りされてきましたが、脱時間給制度だけでも通していく様子です。しかし早期法案の

可決を求めていた経済界からは失望の声が上がっています。

 

 

【3月2日 日本経済新聞より】

働き方改革の先行きが混沌としてきた。安倍晋三首相は今国会に提出する働き方改革関連法案から裁量労働制を削除して乗り切る構えだが、野党は労働時間でなく成果で賃金を払う「脱時間給制度」もやり玉にあげる。人口減の中で経済の活力を維持し、生産性を高めるはずの改革は機運をそがれつつある。経済界からの政権批判も強まり始めている。裁量労働制の対象業務拡大の先送りは、企業が成長力を高める際の障害になる。新たに対象となるはずだった業務はIT(情報技術)の普及やグローバル化が今後さらに進むときにカギとなる仕事が多いからだ。携わるホワイトカラーの生産性向上の機会を逃したことは、企業にとって痛い。仕事の進め方や時間配分を働き手にゆだねる裁量労働制は、生産性向上への本人の意識を高められるという意義がある。現在は研究開発職、システムエンジニア(SE)などの専門職や、調査・企画業務の人に適用されている。厚生労働省の2017年の就労条件総合調査によると、雇用されている人の1.8%が裁量労働制で働く。今国会に提出する働き方改革関連法案で対象に加える予定だったのは、たとえば法人顧客が抱える課題の解決策を提案する営業職だ。情報分野の企業なら、市場のニーズを分析するシステムをSEとともに企画・開発し、顧客企業に売り込む仕事などが想定される。人工知能(AI)などITを駆使して新しい製品やサービスを創造する仕事は、企業にとってますます重要になる。柔軟に働ける裁量労働制の対象とすることで社員の能力を十分に引き出し、企業の競争力強化につなげる狙いがあった。

社内の品質管理の仕組みや製造ラインなどを改善する業務も対象にすることにしていた。立案した改善計画がきちんと実行されているか現場を回って点検し、より良い計画に改めるといった仕事だ。こうした企業の中枢業務に携わる社員の間で生産性向上への意識改革が進めば、効果は大きかったろう。いま企業収益は好調だが、中長期の視点に立てば、裁量労働制の対象拡大の先延ばしは日本企業を不利にするだけだ。日本生産性本部の分析によれば、16年の日本の時間あたり労働生産性は経済協力開発機構(OECD)加盟の35カ国中、20位にとどまる。主要先進7カ国の中ではデータを追える1970年以降、最下位が続く。その打開の糸口が裁量労働制の拡大と、成果をもとに賃金を払う「脱時間給」制度の創設だが、柱の1つが早くも先行き不透明になった。政府は働き方改革関連法案から切り離す裁量労働拡大について、できるだけ早く法案を提出する努力が求められる。

裁量労働制が働く時間の短縮に直接結びつくかのような安倍晋三首相の答弁は問題があったが、優秀な働き手なら、より短い時間で成果をあげられるのは事実だ。脱時間給制度も当てはまる。能力のある人が高い満足度を得られる制度づくりも経済・社会の活力向上には必要だ。